
2005/03/18 20:38
1万円でも帰ります
今日という日をたぶん忘れることはない。ここ数年の花粉症人生の中でもっとも過酷な一日だった。過酷という言葉は日常的に使われており、あまり辛さが伝わる言葉ではないが、「(血も涙も無いかと思われるまでに)きびしくてむごいこと。」と意味する言葉であることをお忘れなく。
卒業式だった。いや、私の卒業式ではなく、私の後輩の卒業式であって、行く必要もないのだが、最後にみんなに会いたいと言うと軽薄だが、実際はみんなの様子を伺いたかった、などと言った興味本位であると言っても過言ではない。興味がある、だから行ったのだ。別に、写真が撮りたかったわけではない。
例年通り、日本武道館で行われていた。数日前の天気予報では、晴れるか怪しかったのだが、朝起きてみると、空は綺麗に青で塗られていた。
こんな日は、花粉症の人にとって大敵だ。今年はしかも例年の30倍らしい。30倍の苦しみって想像できるはずもない。がんばって30倍の苦しみを表現しようにもなかなか浮かばない。分かりやすく、、、あ、出来ました。今年だけ消費税は150%です。うむ、なかなかいい30倍の例えだ。去年は300万円の車を買うのに消費税は15万円でした。でも、今年は消費税だけで450万円で、計750万円です。。。
信じられないが、今年の花粉はこんな感じらしい。
詳しく言うと、1立法センチメートルに500個の花粉が入っている感じと耳にした。1立方メートルに50,000個。だいたい人間の周囲を2立方メートルとすると、100,000個。つまり、常に僕らの周りには、10万個の花粉が漂っていることになるらしい。。。
本当に信じられないが、今年の花粉はこんな感じらしい。
こんな状況の中の武道館行き。ポケットティッシュは4つもあれば足りるかな、と思い、バッグに詰める。しかし、武道館に着いたらすでに3つを消費し、みんなでお昼ご飯を食べている頃に4つめもなくなった。目の痒みも尋常ではなく、30倍の痒みが襲ってくる。(どうでもいいが、30倍、30倍、とばかり言っていたら、ドラゴンボールを思い出した。そんな世代なのである。分からない人はわからないでいいが。)
お昼ご飯を食べたところのビルの1Fは奇跡的にも薬局だった。しかも、10組入りポケットティッシュ6個パックが98円と破格。奇跡が起こった。途中のキヨスクで、ポケットティッシュ1つ100円を買おうかと思っていたので、はっきり言って救われたと思った。
しかし、しかしだ。その昼ご飯を食べた店では、入った途端に、じわーと目があつくなり、信じられないほどの痒みが襲ってくる。周囲の人間にはよく言うのだが、目をかき続けると、ドラえもんのタイムマシンに乗っているときの周りの状態が目の前に広がる。ドラえもんのタイムマシンは、時計がまるでダリの絵のように歪んでいるが、僕が見る世界は、白黒の格子模様がぐにゃぐにゃとまるで無規則に歪んでいる。そんな不思議な世界に何度も入っていたが、自分でも分かっているとおり、掻くとより痒くなるのだ。掻いてはいけない。そんなことは分かっている。でも、痒い。
また奇跡が起きた。束の間の夕立があった。空中に舞っていた花粉は地面にたたきつけられ、死んでいった。その間は、本当に楽だった。でも、地下鉄に乗っていたり、地下道を歩いていたりしていたので、それだけの要因ではなさそうだが、楽だったことは確かだ。
僕は、渋谷に18時半に行き、飲み会の約束があった。一緒にいた卒業生は、同じく18時半に恵比寿に行き、卒業パーティーがある。僕らは、15時の新宿を歩いていた。特に、見るものもなく、あるお店に3時間ぐらい定住することになった。いや、僕がうろうろするのが非常に億劫だったから提案したのだが、しっかりと乗ってくれるので気が置けない人間は素晴らしい。
その店では30分も経たないうちに、目がものすごく痒くなった。ここには、花粉が充満しているようだった。触りまくっていた。そして、先ほど、ポケットティッシュを購入したので、鼻もかみまくる。最近では、コーヒーを飲んだ後、ご飯を食べた後、などは僕が座ったところには、ティッシュの山が出来上がる。もちろん、家のゴミ箱はティッシュが90%を占める。ここ数日で3個のボックスティッシュを潰した。いや、学校の研究室でも3個は潰した。そのくらい、鼻が出る。変な形だからか?
鼻も出たが、目も出た。掻きまくるしかなかったのだが、描き続けていたら、目がグミ、いやゼリー状になった。白目の部分だけである。黒目の部分は反対に硬くなっているようだった。ものすごい形相になり、目は腫れていた。ふと気づくと、目の前が白くなっていて、右目は異常に重い。そして、最終的には右目は痛みも痒みも感じないというか、麻痺した感じになった。そもそも、目やにもひどいので前が見れたものではない。左目もひどかったが、右目に比べればまだましだ。
そんな状況の中、外を歩くと強風。いつのまに風が出たのだろう。煽られると酷い。雨が降っている状況に、強風も混じっている、そんな状況に似ている。雨でも身体が濡れ辛いのに、強風が吹くものだから傘が意味ないよ、そんな感じである。つまり徹底的に痛めつけられる。しかし、もう目は麻痺しているので、より視界が悪くなるだけだった。
こんな状況の中、飲み会、、、、いや、無理だ。限界だ。行きたくない、と告げたが、はっきり言ってむこうにとっては大迷惑な話である。本当に申し訳ないと思っている。だからこそ、無理なら行きますと言っておいた。もちろん、行くつもりなどない。ただ、お金は払います。−−そんな意味である。
1万円払ってでも帰れるのなら、帰る。1万円払えば、この極度の苦痛から逃れられる。
「払います。」
どうやら、そのお金は払う必要はなくなったようだが、定かではない。払えと言われれば、払うつもりだし、代償にここにいた人たちに迷惑を掛け、次回から誘ってもらえないかもしれないという不幸もつきまとう。それでも帰りたかった。
いや、実際、帰った。だからこそ、今この文章を書いている。
今日の悲劇は計り知れないほどだ。これほどまでに花粉に悩まされるなんて、想像を絶するものだ。
家の中は花粉が少なく、落ち着いてきた。安堵感と同時に、罪悪感も広がってきた。

